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[東京 30日 ロイター] 武藤敏郎・大和総研理事長(前日銀副総裁・元財務次官)は30日、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が2月に「中長期的な物価安定の目途」を導入し、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率で1%を目指すことを明確にしたことを受け、今後も日銀が追加緩和に動く可能性は十分にあると述べ、日銀はさらなる金融緩和でCPIを1%に近づける努力をすべきと語った。
足元の日本経済は欧州債務問題の小康や、円高・株安の修正などで明るさも見え始めているが、武藤氏は景気回復はマイルドなものとし、需給ギャップの解消に時間がかかると指摘、そうした状況下での日銀による追加緩和は「合理的」と指摘した。 <マイルドな景気回復下での追加緩和は「合理的」> 武藤氏は、日銀が2月の金融政策決定会合で「中長期的な物価安定の目途」を打ち出し、CPI1%を目指すとしたことについて、物価と金融政策努力を結び付けたものであり、「今後の物価動向によって、日銀はさらなる金融緩和の努力をしなければならないということだ。日銀が追加緩和に動く可能性は十分にある」と指摘。CPIは2014年度も「1%に届くかわからない」との見通しを示し、「当面の日本経済は低い物価上昇にとどまると見込まれており、(日銀は)さらなる金融緩和でCPI1%という目標に近づけていく努力が重要だ」と語った。足元の日本経済は、欧州債務問題の小康や米経済指標の好転に加え、2月の日銀の対応もあり、それまでの円高・株安が是正されるなど、明るい兆しも見え始めている。こうした環境下での追加緩和の必要性について武藤氏は「足元の景気がある程度回復しているといっても、マイルドなもの」と述べ、「GDPギャップが埋まるには相当の時間がかかる。そうであれば、日銀が金融緩和をさらに実施していくことは合理的だ」と述べた。 <日銀の政策は「量的緩和」、金融市場通じて実体経済に好影響> 武藤氏は、国債やリスク性資産を買い入れる資産買入基金を中心とした現行の日銀の金融政策を「量的緩和」と言明。日銀では、過去に実施した当座預金残高をターゲットとした量的緩和について、実体経済への影響は限定的だったとみているが、武藤氏は量的緩和の効果について「金融市場に与える影響、市場の安心感を確保することが、実体経済にもいい影響を及ぼす」と指摘。2月の日銀の追加緩和を含めた対応が円高・株安是正の一助になったことで「輸出産業に明るさをもたらしている」とし、株高によって「米国ほどではないが、資産効果があり、消費に好影響を与える可能性がある」と語った。 <国債買い入れの実効性上げるには、対象国債の残存期間延長など必要> 追加緩和の具体的な手段では「現在の量的緩和政策の中で、リスク性資産をより多く買う、国債買い入れにおける短期と長期のバランスをどうするか、などが考えられる」と述べ、このうち国債の年限について「(国債買い入れの)実効性を上げるには、買い入れる国債の残存期間を延ばして、(保有残高を)ネットで増やす必要がある」との考えを示した。その上で、「(今後の緩和策は)より細かな対応にならざるを得ないが、市場はそれを見て中央銀行の意志と本気度を解釈する。こうしたことが予想以上に効果を上げることは十分に考えられる」と語った。 <日銀による大規模な国債購入、財政ファイナンスではない> 武藤氏は、日銀による大規模な国債購入は財政ファイナンスにあたるとの見方に対し、「財政ファイナンスと決めつけることはできない」と言明。理由として、日銀が国債を直接引き受けているわけではないことに加え、量的緩和という非伝統的な政策に踏み込んでいる以上、「バランスシートを使った国債の買い増しは、量的緩和を達成するための手段。財政支出のファイナンスを目的とするものではない」ことを挙げた。その上で、成長通貨の供給を目的とした国債買い入れオペで設定している「銀行券ルール」について、「金融緩和という政策目的を遂行するために必要であれば、一時的に国債保有額が銀行券残高を上回っても良いと思う」とし、「銀行券ルールをあまり厳格に考えることは本末転倒だ」と語った。 <消費増税とん挫なら格下げほぼ確実、財政規律堅持が重要> 一方、何らかの理由で国債相場が暴落した場合は、無秩序な金融システム不安を回避するため、財政ファイナンスと受けとめられても日銀は国債の買い支えに動くべきだと強調。さらに、今後景気が回復し、物価が上昇していく局面になれば、金融緩和からの出口政策が必要になると言及。当面は出口政策が課題になるような状況ではないとしながらも、「タイミングが遅れれば、インフレ懸念が現実化するリスクが高まる」とし、「政策当局としては、出口政策を常に念頭に置いておかなければならない」と語った。また、野田政権が進めている社会保障と税の一体改革に関し、消費増税が不可能になった場合、「格付け会社が日本国債の格付けを引き下げることはほぼ間違いない。その場合は2─3ノッチの格下げの可能性がある」としたが、政府が消費増税への努力を継続するなど財政規律を守る姿勢を堅持すれば「格下げが直ちに日本経済に無秩序な混乱をもたらす可能性は高くない」との見方を示した。 (ロイターニュース 伊藤純夫) 2012年 03月 30日 23:41 JST
政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表の裁判で、東京地裁の大善文男裁判長は元秘書への東京地検特捜部の取り調べについて、「違法、不当なもので許容できない」と厳しく批判した。
公判中の裁判長による捜査手法の否定は、異例だ。捜査段階での供述調書の大部分が採用されなかった検察当局には、猛省を求めたい。 公判では、小沢被告が資金団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金収支報告書に共謀して虚偽記載したかどうかが問われている。これに対し東京地裁は、小沢被告に虚偽記載を「報告し、了承を得た」とした元秘書の石川知裕衆院議員の供述調書を証拠採用しないことを決めた。 検事の取り調べに「強力な利益誘導や圧力があった」とされ、任意性、信用性が認められなかったためだ。石川議員が隠し録音していた内容との差異が、調書の信用性を著しく低下させた。 池田光智元私設秘書を調べた検事が、取り調べの際のメモを廃棄したことについても、大善裁判長は「適正な取り調べを行ったことの裏付けを自ら失わせた」と厳しく指摘した。 検察は、まさに自らの信用性を自らの手で失墜させたのだ。 小沢被告の強制起訴は、検察による2度の不起訴を経て、検察審査会が議決したものだ。 検察による不起訴は、捜査段階での不手際を糊塗(こと)するためだったと邪推されても、抗弁しがたいのではないか。 検察官役の指定弁護士は、有罪立証への大きな柱を失った。ただし、これで公判の行方が決したわけではない。石川議員ら元秘書3人の公判でも調書の多くが不採用となったが、客観的事実から全員が有罪となった。 公判での小沢被告は、指定弁護士の被告人質問に「すべて秘書任せ」で「記憶にない」を連発した。裁判員制度の導入以降、供述調書よりも公判での供述や証言、客観的事実が重視される傾向が強くなっている。小沢被告の法廷供述の評価にも注目したい。 検察は、大阪地検特捜部による郵便不正事件での証拠隠滅・犯人隠避事件で国民の信頼を失った。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件でも中国人船長を処分保留で釈放し、疑念を抱かせた。これ以上の失望は基盤を危うくさせる。 2012.2.19 03:03 [主張]
2月15日(ブルームバーグ):資産家ジョン・ポールソン氏が運営する米ヘッジファンドのポールソン(運用規模230億ドル)は投資家向けリポートの中で、ユーロ圏について「構造上の欠陥がある」と指摘し、いずれ解体するとの見方を示した。
ブルームバーグが入手した同リポートによれば、ユーロ圏の解体はギリシャのデフォルト(債務不履行)によって引き起こされる恐れがあると同ファンドは見ており、そうなれば世界的リセッション(景気後退)と金融システムの混乱が発生する可能性があるという。 さらに、「ギリシャのデフォルトは金融システムにリーマン・ブラザーズ破綻以上の衝撃を与え得るものであり、世界経済は即座に収縮し、相場が下落するだろう」と述べた。 過去2年にわたりギリシャの再建に取り組んできた欧州指導者らは、同国に救済資金を再度投入するか、あるいは前例のない規模での国家破綻リスクを冒すかで意見が割れている。 更新日時: 2012/02/16 04:45 JST
[ケンブリッジ(米マサチューセッツ州) 8日 ロイター] 米国民は伝統的に資本主義の最も強力な信奉者だ。だが最近の調査では、資本主義を肯定的に受け止めている人々は半分程度で、40%の国民は否定的な考えを示している。特に18―29歳の青年層や、アフリカ系やヒスパニック系の人々、所得が年3万ドル未満の低所得層、自称民主党支持者の間で、資本主義に対する失望感が広がっている。
米国で行われた過去3回の選挙は、いずれも現職に厳しい結果となった。2006年と08年の選挙では左派が勝利を収め、2010年には右派が圧勝した。右派勢力の間では茶会党(ティーパーティ)、左派からは「ウォール街占拠」運動が勢力を拡大したことは、今年の選挙はいつも以上に一方向に傾きやすいことを示している。 では、市場資本主義に対する失望感はどのように正当化されるのだろうか。それは、1)現代の諸問題は、今日の市場資本主義そのものに内在する問題なのか、それとも、もっと直接的に解決できる問題なのだろうか。2)市場資本主義以外に考え得る代替策があるのだろうか、という、2つの重要な問いに対する答えに左右される。 スタグネーションや異例なほど深刻な失業問題が日本から他の先進国にまで拡散したことにより、雇用を創出し、幅広い中間層の生活水準を引き上げる媒介役としての資本主義の役割に疑問が生じている。今や、米国や欧州が今後5年以内に完全雇用状態を取り戻すと確信している人はほとんどいない。欧米とも、長期に渡って需要が経済の制約要因となる見通しだ。 そのことは、資本主義の本質的な欠陥を映し出しているのだろうか。それとも、ケインズが示唆するように、大規模な構造改革ではなく適切な財政および金融政策で対処できる、車のちょっとした電気トラブル("magneto" problem)のような問題なのだろうか。筆者の見方では、圧倒的に多くの現象が後者が正しいことを裏づけているように思える。資本主義を改革しようとする努力は、需要喚起に必要な措置からかけ離れたものとなる可能性がある。マクロ経済政策が適切に修正されれば、現在の問題は多くが解消できると思われる。 もっとも、景気サイクルで説明できる以上に失業者が急増し、景気が回復した後でも25歳から54歳までの米国民の6人に1人が職を見つけられない可能性や、所得が上位1%あるいは0.01%の人々に集中しているという事実、社会的モビリティの低下などは、資本主義がもたらす公正さに対する著しい疑問を呼び起こしている。その問題は深刻で、自然に是正されるとは考えられない。 景気循環に関する懸念とは異なり、これらの問題に対する明確な解決策は存在しない。実際、中国の製造業における雇用すら15年前の水準を大幅に下回っているという事実は、この問題がテクノロジーの革新に深く根ざしたものであることを示している。 農業中心の経済が工業中心の経済に屈した理由は、食料に対する需要を少数の労働力で満たすことができ、多くの労働者が農業以外のセクターに流出したためだ。現在、製造業や幅広いサービス分野でも同じプロセスが起きており、人々の雇用が減少している。同時に、近代工業時代の初期と同じく、産業構造の著しい変動や大量生産が可能になったことが、数少ない幸運な人々にのみ莫大な富をもたらす結果となった。 経済構造の変化は、過去20―30年間に同じ品質のテレビや病院への入院費の相対価格が50倍も変動したことに典型的に現れている。平均的な労働者の賃金が低迷していることはよく引き合いに出されるが、それは現在起きている現象の重要な側面を覆い隠している。 生産性が急速に高まっている家電製品、衣料品、通信サービスなどを基準にすれば、賃金は過去20―30年間に大幅に上昇している。問題は、住宅、医療、食品、エネルギー、教育などの費用と比べた場合に賃金が低迷あるいは下落していることだ。家電や衣料品などに対する需要を満たすために必要な労働力が少なくすむようになっているため、医療や教育などに従事する人々が増えるのは自然なことだ。エコノミストのマイケル・スペンス氏が言うように、こうしたプロセスが進行しており、米国では基本的に、過去20―30年の雇用の伸びはすべてモノ以外の分野で創出されている。 厄介なのは、こうした分野の多くでは、伝統的な市場経済の正当性が弱いことだ。モノの生産に比べ、医療や教育関連の生産に対する公的セクターの関与が大きいことは偶然ではない。例えば、鉄鋼生産から高齢者介護などの分野に労働力を移動させることが急務になっている。また、公的セクターを縮小あるいは鈍化させることも急ぐ必要がある。 こうした流れは、産業資本主義を掲げる政府が破たんするリスクももたらしている。市場における成果がますます出にくくなったとしても、財政面の制約で公的セクターが対応できる能力には限りがある。社会的保護プログラムをいつ、どのように削減(削減するかどうかではなく)すべきかが再び課題となっている。資本主義国家の多くで基本的な債務支払い能力に疑問が持たれている。 筆者は米政府が長期に渡り非常に魅力的な条件で資金を借り入れることができると誰よりも信じているが、懸念されるように民間の借り入れが引き続き停滞すれば、支出や歳入が計画通りに進まないことは疑いの余地がない。欧州の状況は、市場が財政問題を深刻に考えており、急速に警戒感を高めることで事態を破滅的な方向に導いていることをわれわれに教えている。 あるレベルでは、政治的意思や勇気の強化がこれらの問題に対する答えになろう。だが、もっと深いレベルでは、変化しつつある社会で生きている先進国の人々は、ますます豊かになっている社会がなぜ社会的保護のレベルを逆戻りさせる必要があるのかを問い直すべきだ。逆説的に言えば、その答えは個人教育や介護、管理の機会コストを高額に押し上げた資本主義の成功そのものの中にある。 今のように不満足な成果しか得られない場合、現在の努力を一層進めるべきだと考える人と、進むべき方向を転換すべきだと主張する人の間で、常に議論が巻き起こる。だが、市場資本主義に関して言えば、その議論はやや的外れだ。市場資本主義が取り入れられた分野は大きな成功を収めている。次の世代の課題は、その成功がますます当然と受け止められ、苦しい場面ではますますフラストレーションの根源になったとしても、市場の領域を外れて成功を成し遂げることはできないことだ。最も必要な改革は現代の資本主義者の役割ではなく、少なくとも医療、教育、社会的保護に関わる人々の手に委ねられている。 (ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官) 2012年 01月 10日 23:30 JST
マーケット・ウォッチ
2011年 12月 16日 21:08 JST 【フランクフルト】2012年は、欧州の首脳たちがユーロ圏の債務危機への最終的な解決策を見つけ、投資家がようやく一安心できる年になると考えているのではないだろうか。 いや、そんなことはない。 2011年のひょっとしたらユーロは崩壊し得るという認識に伴って起きたボラティリティーの高まりと市場の混乱が完全に解消されることはなさそうだ。その代わり、欧州各国の首脳や政策立案者たちは、政治的に受け入れがたい変革を推進するのに、差し迫った惨事の可能性に頼り続けることになる、とエコノミストたちはみている。 今月、ドイツの議会に対して危機が一挙に解決することはないと釘をさしたのは、欧州で最大の権力を持つ政治家、メルケル独首相だった。同首相はそのプロセスをマラソンに例え、選手たちはスタートを切ったばかりだということを示唆した。 先日、欧州連合(EU)加盟国のほとんどがより緊密な財政・経済同盟に向けて前進することに合意したが、その実現には数カ月、または数年かかるはずで、欧州の市場と政界に不透明感とボラティリティーが居座り続けることはほぼ確実である。 ロンドンの投資顧問会社、アブソリュート・ストラテジー・リサーチのエコノミスト、ドミニク・ホワイト氏は、金融市場の短期志向と政治家たちが好む段階的なアプローチとの対立がすぐに解消されることはないとみている。 メルケル首相と市場の対立 「政治的対応はドイツ主導なので、この危機が一発で解決されるような大胆な対策が取られる可能性はきわめて低いだろう」とホワイト氏は言う。 コンサルティング会社、スピロ・ソブリン・ストラテジーのマネジングディレクター、ニコラス・スピロ氏はその対立を、即時の国債買い支えを求める市場関係者と、救済には緊縮政策とより厳しい財政規律が伴わなければならないと主張するドイツとのせめぎ合いと捉えている。 「この危機に対する明らかに異なった2つ考え方――条件付きの支援と無条件の支援――の溝を埋めるというプロセスは、長い苦痛と政治的困難を伴うものになるだろう」とスピロ氏は指摘する。 しかし、スピロ氏もホワイト氏もユーロ圏が分裂するとは思っていない。 分裂すると考えている専門家もたくさんいる。分裂は予想していないが、欧州経済通貨同盟(EMU)から一国以上が離脱するリスクが高まったことを認めているアナリストもいる。 キャピタル・エコノミクスはかねてより欧州危機の結末はユーロ圏分裂となる可能性が高いと主張してきた。同社は、ギリシャが来年に、さらに数カ国が2013年に離脱する公算が高いとみている。 その一因として、市場が求めるスピードに政策立案者たちがついて行けなくなるのではという観測が挙げられる。 キャピタル・エコノミクスの市場エコノミスト、ジョン・ヒギンズ氏は、条約改正やユーロ共同債の発行が、危機拡大の阻止に間に合うよう実施される公算は小さい、と最近のリサーチノートで述べている。また、こうした方策はユーロ圏の債務危機の根本的な原因に対処できていないということも指摘している。 「われわれが正しければ、あらゆる楽観的観測は悲観論に取って代わられ、EMUが分裂するという見通しに投資家が再び怖気づけば、ユーロ圏のソブリン債と通貨ユーロにはさらなる売り圧力がかかる」とヒギンズ氏は述べている。 将来の歴史学者は2011年を、考えられないことが考えられるようになった年だった、と振り返るかもしれない。 2010年にこの危機がいずれユーロを没落させると警告したエコノミストは少なかった。ところが危機は拡大し続け、欧州の首脳たちが何度も状況を把握しそこなったことで、ユーロ圏は分裂するという観測が主流になってしまった。 投資会社などはユーロ圏が分裂した場合の潜在的なコストを計算した(ユーロ圏に投資しているあらゆる企業にとってかなり高くつくことがわった)。分裂を想定して計画を立て始めた企業もある一方で、金融取引の決済・清算機構(クリアリングハウス)では各国の通貨の復活やその他の不測の事態にシステムが対応できるかを確認する予行演習が行われた。 11月にユーロ圏全体の国債利回りが急上昇したことは、この危機がもはや周辺国だけのものではないことを示していた。イタリア国債が逆イールド状態に陥り、その利回りは警戒水域とされる7%を上回った。フランスやオランダなど「トリプルA」の格付けを持つ国のソブリン債の利回りまで急上昇した。 ドイツ国債の入札が大幅に「札割れ」したことが明らかになると、ドイツ国債の利回りも上昇した。それでもドイツの借り入れコストは低いままだが、こうした動きはユーロ圏の「会計部長」の信用さえ揺らぎかねないという不安感を市場に与えた。12月8日、9日にブリュッセルで開催されたEU首脳会議では26カ国が財政同盟を目指すことで合意したが、それでもソブリン債の利回り上昇には歯止めがかからなかった。 その一方で、欧州中央銀行(ECB)は議論を呼んでいる国債購入プログラムに関して中途半端な態度を維持している。国債購入プログラムが一時的で限定的なものだと強調したことで、ECBはその効果を減少させてしまったというのがストラテジストたちの見解だ。 もちろんECBの渋々な対応は、中央銀行がユーロ圏の主権国家にとって最後の貸し手となることにドイツが反対していることに起因している。 しかし、就任したばかりのモンティ首相が新たな緊縮策と低迷する経済の競争力を蘇らせることを目指した構想に着手しようとしているイタリアが主戦場であり続けることに変わりはない。 イタリアの10年物国債の現在の利回りは6.7%。ユーロ圏周辺国と中核国の国債利回りのスプレッドは不安を覚えるほど拡大している。 ドイツのエプスタインに拠点を置くルーランド・リサーチのストラテジスト、ハイノ・ルーランド氏は「市場はもはやユーロ圏の分裂を織り込んでいない」と話す。 イタリアの経済規模はユーロ圏第3位で、その債券市場の規模は世界第3位である。このため欧州の銀行はイタリア国債に対してかなりのエクスポージャーを抱えている。 イタリア国債が債券市場から締め出されれば、欧州はその債務を支援しきれなくなり、ユーロは大混乱のうちに終末を迎えることにもなりかねない。 「イタリアの信用を強化することがユーロ圏存続の必須条件だ」とスピロ氏は言う。 今回の危機で、欧州の政治家はまったく手柄を立てていない。 欧州の首脳たちが危機に対する包括的な解決策と銘打った計画を発表したのは、12月9日の首脳会談で少なくとも5度目となる。 それでも最終的にユーロ圏を存続させるという重責を渋々ながら担うのは、ECBになるかもしれない。 ニューヨーク州バルハラに拠点を置くハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏はこう説明する。「いずれはドラギECB総裁も、いかなる状況においても紙幣を増刷して国債を買うのは過ちで、インフレを引き起こすことになるというドイツの考え方に異論を唱え、支持を勝ち取ることになるだろう」 ユーロ圏の経営難に陥った銀行を隔離する唯一の方法は、ECBが国債を購入することで効果的に資金を作り、その額に応じた流動性を金融システムから流出させることで国債購入が相殺されることがないようにすることだとワインバーグ氏は主張する。 実際、この危機の震源は銀行なのだ。銀行間での貸し渋りが悪化するにしたがって、金融機関はECBが供給する資金にますます依存するようになっている。 ドル資金の供給不足を受けて、米連邦準備理事会(FRB)、ECB、その他の主要中央銀行は欧州の銀行がドル資金を調達しやすくなるようにドルスワップ協定を結んだ。ECBは12月に、銀行が確実に資金を調達できるように、担保条件を緩和するなど新たにさまざまな方策を導入した。 その一方で、最も痛手を被ったのは金融セクターだった。DJストックス600指数は年初来で14%、ドイツのDAX指数は18%、フランスのCAC40種指数は22%、それぞれ下げている。 アブソリュート・ストラテジーのホワイト氏によれば、ECBが国債購入プログラムに進んで取り組み、その額を積極的に増やすことで金融機関のバランスシートを守ることができれば、銀行株にも回復の余地があるかもしれないという。しかし、投資家のポートフォリオに入る価値があるのは、財務的に最も健全な銀行だけなので注意すべきだろう。 その他の景気敏感セクターに投資するなら、製薬・バイオテクノロジー、産業運輸、石油関連機器などに的を絞って慎重に銘柄を選ぶべきだ。 一方でルーランド氏は、ECBがより積極的に動けば、現在冷戦レベルに近い株式のリスクプレミアムが大きく下がると見ており、欧州株には大幅に反騰する余地があると言う。 しかしそれは、投資家が大量の債券の発行と償還に備える来年の第1四半期に、欧州の首脳たちが包括的で信頼できる解決策の導入に向けて動くことが条件となる、と同氏は言う。 ウニクレディトの推計では、イタリアは来年の最初の4カ月間で総額930億ユーロの償還を目指す。2011年は総額1940億ユーロの償還だった。2012年、ユーロ圏の国債償還の総額は720億ユーロ増加して6250億ユーロになることが見込まれている。 記者: William L. Watts
12月9日(ブルームバーグ):単一通貨ユーロを守るため、欧州首脳らは財政同盟への青写真を打ち出した。イタリアやスペインが債務危機に飲み込まれてしまうとの市場の懸念を静める役回りはこれで、中央銀行に回ってきた。
8日夕に始まった欧州連合(EU)首脳会議は夜を徹して協議し、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はこの結果たどり着いた合意を歓迎したが、投資家は高債務国の返済を万全にするためには危機と闘う武器がさらに必要だとECBに迫っている。9日の市場では、ECBによる国債買い入れが伝えられているにもかかわらず、イタリアとスペイン債が下落した。 ドイツ銀行のチーフエコノミスト、トマス・マイヤー氏(フランクフルト在勤)はブルームバーグテレビジョンで、「首脳らは財政統治で最終的な目的地を定義づけたが、そこに到達するにはかなりの時間がかかる」と指摘。「短期的にはさらなる緊張が生まれ、ECBの介入を一段と誘うことになるだろう」と話した。 債務危機の封じ込めに向けた第一弾の対策から1年7カ月後、欧州がまとめた包括策第5弾は国際通貨基金(IMF)に最大2000億ユーロ(約20兆7000億円)を拠出するとともに、将来の債務を抑制するため財政規律を厳格化する内容となった。また、5000億ユーロ規模の恒久的救済枠組みである欧州安定化メカニズム(ESM)の開始時期を来年に前倒する一方、債券保有者に損失負担を迫る要求は緩和した。 ドイツのメルケル首相は「財政同盟の開始は良い前進だ」と記者団に語り、「われわれは結果に非常に満足している」と述べた。 市場の反応はまちまち 投資家の反応はまちまちだ。欧州株は上げ、ユーロは円やドルに対して値上がり。一方でイタリア10年債利回りは11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して6.565%。スペイン債は9bp上げ5.909%となっている。 ドラギ総裁はEU首脳会議での合意を「非常に良い結果」として歓迎。しかし総裁は8日の金融政策決定後の会見では、欧州各国の「財政協定」に向けた合意がECBによる国債購入拡大につながるとの期待に水を差している。 ドラギ総裁は、ECBが国債購入を増やせば金融政策と財政政策の境目が曖昧になり、政府に財政健全化を迫る圧力が弱まると懸念している。このためECBは8日の政策委員会で、銀行融資を促すための支援策と利下げを決定。3年物資金供給オペの導入や、オペで銀行から受け入れる担保の基準緩和を発表した。 来年早々の資金調達が関心の的 JPモルガン・チェースの欧州担当チーフエコノミスト、デービッド・マッキー氏は「市場は来年早々に各国政府や銀行の調達がどうなるのかに注目している」と述べ、「ECBは銀行向けには予想以上の支援に出た。しかし、各国政府に対してどうするのか、市場は今だに確信できない」と付け加えた。 ブルームバーグのデータによれば、ユーロ圏の各国政府が返済期限を2012年に迎える債務は短期・長期合わせ1兆1000億ユーロ余り。うち、イタリアとフランス、ドイツだけで約5190億ユーロが1-6月に償還を迎える。ディールロジックのデータを基にしたシティグループの試算によると、欧州の銀行は同期間に6650億ユーロを返済する必要がある。 ベレンベルク・バンクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は、借り換え需要が向こう2カ月で「雪崩」のように押し寄せ、危機が悪化しかねないとみる。「そうなればECBはとうとう、ユーロとECB自身を救うために危機対応を強化せざるを得なくなるだろう」と語った。 更新日時: 2011/12/10 00:50 JST
マイケル・オースリン
2011年 11月 15日 19:19 JST 「韓国はあと10年成長が続く。それから日本と同じ道をたどるだろう」。ある著名な韓国人エコノミストは、米国人の訪問者にそう言い放った。 来年任期満了を迎える韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は、オバマ大統領お気に入りのアジアの指導者かもしれない。しかし、30%という彼の低い支持率は、インフレの高まりや財閥との親密な関係、所得格差拡大への不安などに国民の不満がうっ積していることを映している。来年、左派候補に大統領就任の可能性があることは、韓国経済のみならず米韓関係にとって、将来問題となるかもしれない。 2009年に日本で民主党政権が発足し、安全保障関係のもつれから、突如、米日関係が冷え込んだことを米韓当局者は忘れるべきではない。米日ほど長きにわたる親密な関係でも、国内世論の高まりと政治のミスでたちどころに悪化、今もなお修復の途上にある。ブッシュ大統領と個人的に親しい間柄だった日本の小泉純一郎元首相だが、後の政権で急速に米日関係は冷え込んだ。それをもじって、後年、李大統領が「韓国版小泉首相」と呼ばれるとすれば、残念な話である。 先月のソウル市長選挙で、極左の政治活動家、朴元淳(パク・ウォンスン)氏が勝利を収めたことを受けて、ワシントンではすでに「警報」が鳴り響いているはずだ。急進派の朴氏は、4年の歳月を経て米議会で批准され、韓国国会でも承認が必要な米韓自由貿易協定(FTA)に異を唱えた。 すでに混沌とした韓国政界のワイルドカード的存在である朴氏は、今の韓国に渦巻く強い不満を象徴している。彼は、野党第一党の民主党出身ではない。民主党はソウル市長選で独自候補を擁立した。彼を推したのは、ソフトウエアを開発した起業家で人気の高い――ポピュリストと言ってもよい――既存政党に属さない安哲秀(アン・チョルス)氏だ。 朴氏の出現が予感させるこの一種の政治変動は、米国の国益にとって厄介な問題となりそうだ。多くの専門家は、韓国での、対中関係重視の気運の台頭を予想する。最近、米兵による韓国女子高生に対する性的暴行事件が発生したものの、迅速な判決が下され、大規模な反米運動は回避された。とはいえ、米軍に対する社会の批判はなお根強い。北朝鮮の常軌を逸した行動と核開発疑惑が、過去数十年の米韓軍事協力を盤石なものにしたものの、両国の政治関係がかなりの緊張状態に置かれることもしばしばあった。 一方、国際感覚を持つ韓国人には、李大統領の時代は韓国の黄金時代に映る。李大統領は、オバマ大統領との個人的に親しい関係をはじめ、韓国に新たな栄光をもたらした。韓国は、2010年にG20首脳会議を主催、来年は核安全保障サミットの調整国となる。10万人を超える韓国人が米国に留学し、両政府はアフリカ支援で協力体制を取る。サムスンや現代は世界的な有名企業となった。 韓国は、経済的に、過去の悲劇をほぼ完全に克服した。1950年代の戦争で疲弊し、1980年代まで軍人出身の朴正熙大統領の独裁政権が続いたが、今は安定した民主国家で、新興国の発展モデルとなっている。経済成長率は高く、2010年は6.2%を記録。1人あたり国内総生産(GDP)も増加をたどり、昨年は約3万ドルに達している。 こうした功績にもかかわらず、韓国は試練に直面している。思想に変化があらわれ、政治の不安定化と経済への悪影響を招く可能性があるのだ。多数の政党に分かれる左派は、ポピュリストの影響を受け、米韓FTAなどへの反対など、強硬姿勢を強めている。与党はといえば、朴正熙大統領の娘、朴槿恵(パク・クンヘ)氏が采配を振るう、政治の硬直化が著しい企業寄りの腐敗集団とみなされている。有権者は、国政選挙のたびにこの両極の間で揺れ動き、中道の縮小が進む構図となっている。 奇妙なことに、韓国の問題は、隣の大国、日本の抱える問題と同じだ。韓国の喫緊の課題は、人口動態の深刻な危機だろう。世界でワーストに入る同国の出生率は2010年に1.15に低下、日本を下回っている。少子化に伴い、将来の社会保障面の不備を指摘する向きも多い。さらに、労働力の減少が企業の足かせとなり、事業所の海外移転か海外からの労働者の導入かの難しい選択を迫られることになる。 また、韓国の農業は、日本と同様、非効率的で、対外競争から厚く保護されている。食料自給率のランキングは最低に近く、アジアでは日本に次ぐ穀物輸入国だ。政治に多大な影響力を持つ農業団体が米韓FTA批准の反対デモを活発化させていることを受け、韓国国会での批准審議はストップしたままだ。韓国の農家の多くは、耕作面積が小規模で、作物はコメが主体だ。スケールメリットを追求できず、最新の農業技術も利用できない。このような状況が、日用品の国内価格を大幅に押し上げ、政治への不満を増大させている。それは、李大統領の功績を危うくするものだ。 こうした問題山積にひとつ救いがあるとすれば、韓国社会では活発な話し合いが行われ、隣国日本を参考にすることなどで問題への取り組みが始まっていると思われることだ。今週ソウルで開催された峨山政策研究院主催の国際会議(筆者も講演者として参加)では、「危機にある日本」がテーマとして取り上げられた。しかし、今、韓国が問題解決に着手しなければ、おそらく今後10年ほど、同じような国際会議が開かれ、国を救う方法の議論が延々と続くのかもしれない。 (マイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長)
ニューヨークで開催された投資家向け会議「アイラ・ソーン・リサーチ・コンファレンス」をモデルとする「Invest for Kids」会議がシカゴで実施された。同会議は一部の米トップ資産運用者が集まり、最善の投資アイディアを提案するもので、収益はチャリティーに提供される。
9日のシカゴはじめじめした雨模様だった。その日の株式市場は、イタリア国債の利回りが、後戻りできない地点(ポイント・オブ・ノーリターン)とみなされる7%を上回ったことを受けて、売りこまれた。弱気筋は、欧州の大半が金融崩壊に向かう取り返しのつかない軌道にあるのだろうか、と考えていた。 また、長期にわたって先物取引の要塞となってきたシカゴの金融業界で、米商品先物仲介業者MFグローバル・ホールディングスの破綻で明らかになった約6億ドルの行方不明の先物口座顧客資金を巡り多くの向きが歯ぎしりしている。つい最近までMFグローバルの最高経営責任者(CEO)を務めていたジョン・コーザイン氏は良く知られたリベラル主義の民主党議員だった。しかし、イタリアをはじめとする脆弱なユーロ圏諸国の国債取引の資金繰りに充てるため6億ドルをくすねるというアイデアは、やや行き過ぎた富と所得の再配分のようにみえる。 こうした全ての要素にもかかわらず、今回の会議は悲観的からは程遠いものだった。その基調は先週の最後の2営業日に見られた相場の急反発により正当化されたようにも思われた。また、投資不適格級(ジャンク)債の帝王と呼ばれたマイケル・ミルケン氏や不動産王のサム・ゼル氏などの大物も今回の会議に多数参加した。 ミルケン氏は特定の投資アイデアは提供せず、講演時間の多くを費やして医学研究と教育改革および、証券詐欺罪での22カ月間の懲役後に設立したミルケン・インスティチュートというシンクタンクについて語った。ミルケン氏の見解は以下の通り。90年代以来増え続ける米国の肥満は、完全に予防できるものに対する年間1兆ドルの無駄な医療費の支出をもたらしており、さらに米国民は教育と比べ、住宅と移動手段(自動車)に多過ぎる支出を行っている。これは中国などアジアの社会の優先順位と正反対であるということ。 投資に関しては、ミルケン氏の見解は極めて標準的だった。欧州連合(EU)の経済通貨統合はドイツやノルウェーといった北部諸国と、効率があまり良くない地中海沿岸諸国間の労働生産性の不均衡が、失業率の大きな格差につながっていることが問題だ。ソブリン債券は、歴史的にみてギリシャのような常習的なデフォルト国があまりにも多いために、いずれにしても健全な投資手段ではない。人口拡大と中流家庭の台頭のために、中国とマレーシア、タイ、フィリピンやインドといった諸国が明らかに投資すべき諸国となっている。 一方、ゼル氏は新興諸国について発言するよう求められた。同氏が共同経営者を務める投資会社エクイティ・インターナショナルは過去約10年間にわたって20億ドル規模の投資資金を同セクターに配分している。一方、先進国の大半は人口減少に苦悩している。同氏は日本について、2050年までには退職者1人を勤労者1人で支えることになる見通しだと指摘した。 また同氏は、エクイティ・インターナショナルの投資が特に注目しているブラジルについて集中的に発言した。ブラジルは食料とエネルギー、水の自給が十分。ブラジルの中流階級は現在の人口の25%から65%に急拡大している。同国のルラ前大統領といった社会主義の政治家でさえ、自由市場志向を強め、財政責任を負うようになった。ブラジルの主要都市の郊外では住宅やインフラの建設ラッシュで、50年代の米国が思い起こされるという。 スターウッド・ホテルチェーンの創業者でスターウッド・キャピタル・グループのバリー・スターンリック氏は今後数年間の住宅用不動産市場の好転の兆候について言及した。世帯数の増加が続いていること、一部がルームシェア、あるいは親との同居を余儀なくされていること、低金利に加えて値ごろ感が強まっていること(賃貸コストは最近、数十年ぶりに住宅所有コストと同等になった)などで、先送りされた住宅需要が積み上がっていると指摘。 住宅着工件数は30~40万件に落ち込んでいる。需要が通常の状況であれば、130万件の住宅着工が必要となる。住宅差し押さえや住宅ローンの延滞件数は減少し始めている。最も重要なことに、差し押さえ物件の投げ売りを除くと、実際、住宅価格の上昇が見られている。 スターンリック氏は住宅建設業者のトール・ブラザーズを選好している。キャッシュポジションや土地在庫がしっかりしている上、(60万ドル以上の住宅といった)より富裕な買い手という特定市場に強みがあることが理由。富裕層は直近の大不況でもそれほど打撃を受けず、住宅の購入に向ける資産が十分にある。 同氏はまた、ホームセンター大手のロウズも推奨する。ロウズは住宅建設が急増する際に繁盛が見込まれるという。同社はアパートの修理を行う顧客を取り込んで何とかうまくやってきた。ロウズはまた、自社株買いプログラムに積極的に取り組んでおり、スターンリック氏はロウズが最終的には発行済み株式全体の約70%を吸収する可能性があるとみている。さらにロウズは店舗の約90%を所有していることから、不動産取引への参加も可能だ。 株式運用会社のガードナー・ルッソー・アンド・ガードナーのパートナーでバリュー株の投資家、トーマス・ルッソー氏は、スイスの食品大手ネスレや英ビール大手サブミラーといった欧州の多国籍大企業の株式を推奨する。こうした企業は売上高の大部分を欧州以外に頼っており、したがってユーロの下落はこれら企業にとっては収益拡大につながる可能性がある。 同氏はまた、こうした企業の世界的な事業展開や新興市場への参入のうまさと粘り強さに加え、強いブランド価値も称賛している。 オメガ・アドバイザーズのヘッジファンドマネジャー、リオン・コーパーマン氏は、米国の二番底のリセッション(景気後退)は予想していない。また、欧州の政治家が懸念を強め、欧州中央銀行(ECB)にユーロ擁護を十分に公約させ、波及懸念をかき消させることができれば、欧州の金融危機も最終的には後退すると確信している。同氏は米株式が多くの基準からみて割安とみている。同氏が言及する株式の一角に米衣料店、チャーミング・ショップスがある。 アベニュー・キャピタル・グループのマーク・ラスリー氏は、米自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)の株式に多くの価値を見出している。同氏は、GMの金利・税金・償却前利益、支払利息・税金・減価償却・償却控除前利益(EBITDA)に対する企業価値(EV)がわずか1倍となっていることに言及した。フォードの場合はEBITDAに対するEVは3倍となっている。また、GMの破産申請後の債務は50億ドルにとどまっている。 記者: JONATHAN R. LAING 2011年 11月 14日 16:44 JST
野田佳彦首相は、多国間による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加について、最終判断を発表する予定だ。あるいは発表しないかもしれない。首相は既に自ら設定した決定期限を何度か破っている。その間に、さまざまな経済団体同士が言い争いをしている。
TPPをめぐる議論の根底には重要でありながら、見過ごされている事実がある。いずれにせよ日本はいつかは経済再建を行わなければならないということだ。高齢化が進むにつれ、何十年も日本の輸出拡大に貢献してきた製造業の労働者は、国内消費、特にサービス消費をする側としての役割を強めていく。それに伴って日本の名高い高貯蓄率も徐々に低下していくことになる。 最終的に日本の輸出は減少し、純輸入国になる可能性さえある。さらに、国内の貯蓄と投資が減少するとなれば、それを補うために、設備投資資本に関しても純輸入国にならざるを得ない可能性がある。 先に本欄に寄稿したウォール・ストリート・ジャーナルの元コラムニスト、ジョージ・メローン氏を含め、TPP擁護派の主張は説得力がある。すなわち、交渉の結果、広範かつ進歩的で質の高い貿易協定が形成されるのであれば、日本にとってTPPへの加盟が最も効率良く改革をもたらす方法だ。 国内市場を開放し、より広範な競争にさらすことで、国内志向の企業にも迅速な生産性の向上をもたらす可能性がある。これまで世界的な競争によって輸出企業にそうした効果がもたらされてきたように。 だが、TPPをめぐる議論の論点は改革が起こるかどうかではないことを忘れてはいけない。改革は避けられないものであり、問題はいつ、どのようにして起こるのかということ、さらに言えば誰がその「コストを払う」のかという点だ。 輸出企業は日本経団連の擁護の下に「われわれではない!」と叫んでいる。彼らはTPPへの加盟を支持している。TPP加盟国(特に韓国)よりも高い関税が課されることになり、日本の輸出品の競争力が落ちることを懸念しているからだ。 だが、TPPへの加盟・非加盟がもたらす結果については、完全に理解されていない可能性がある。 米韓自由貿易協定(FTA)が早ければ来年1月1日に発効するが、そうなった場合、日本の自動車輸出企業はどうなるかをまず考えてみよう。例えば、日本の輸出企業が2.5%の関税で米国に乗用車を輸出しているとしよう。FTAが発効すれば、韓国企業に対してはその関税が撤廃される。 韓国メーカーは、日本が長年享受していた品質と生産性に関する優位を既におおむね克服している。となれば、日本の対米輸出メーカーは、競争力を保つには、今後は常に韓国メーカーよりも約2.5%高い生産性を維持する必要がある。 今の時点であれば、それは達成可能かもしれない。生産性の向上には資金が必要だが、日本にはその投資費用を賄えるだけの貯蓄がまだ国内にある。だが、その財源はいずれどうなるか。日本が貯蓄を取り崩す状態になれば、海外資本に頼らざるを得なくなるだろう。 興味深いのは、それら海外投資家の進出によって、日本企業がガバナンス(企業統治)強化の必要性に常に迫られることになるかどうかという点だ。これは変化を嫌う一部の日本人経営者が懸念している点かもしれない。国内投資家は手ぬるいため、日本企業は往々にして厳しい責任追及を免れてきた。 オリンパスをめぐる疑惑が次々に明るみになるにつれ、新たな資本によって「優れたガバナンス」がもたらされることになれば、どのような代償を支払うことになり得るかを日本人は不本意ながら垣間見ることになった。オリンパスは、外国人社長が指摘した巨額資金の流用疑惑によって経営陣の不祥事が明るみなり、株価急落を招いている。 それでも輸出産業が競争力を維持できないとしたら、どうだろう。経営者や(国内の日本人)株主にとって、望ましいことではないはずだ。 これほど極端ではないにせよ、経済改革はやはり起こる。年金生活者が増えれば、おのずと国内のモノやサービスの消費が増える。だが、そのコストを負担するのは家計と輸出企業だ。すなわち、国内市場が改革されないために競争が阻害されれば、消費者はモノやサービスに高い対価を支払うことになる。 また、日本が自由貿易協定交渉への参加を長年ためらってきたことで、そのツケを払わされるのは輸出業者だ。高い関税や生産性向上へのさらなるプレッシャー、設備投資需要の増加、そして恐らくそれに付随する資本「コスト」の増加だ。 TPPはそうした改革コストの再配分につながるため、経団連は支持している。TPPに加盟しても、輸出企業にとって、やることはこれまでとあまり変わらないかもしれない。海外のライバル企業を上回らないまでも、引き離されない程度の新規投資は必要だろう。 真の影響は国内志向の企業と家計に及ぶ可能性がある。国内志向の企業は、新たに開放された市場で競争力を維持するために一段の投資が必要になり、そのためにはこれまでよりも海外資本を引きつける必要が出てくる可能性がある。また家計にとっては、商品の低価格化が進み、結果的に購買力が高まる可能性がある。 農業や医療サービス(高齢化が進む社会において消費、ひいては海外からの新規参入を促すと予想される主な分野)といった内向きの産業が、TPP交渉への参加に反対する根本的な理由はここにある。 要は、野田首相がどんな結論を発表するにせよ、これらシナリオのうちどれか1つは必ず現実化するということだ。TPPに加盟した場合と、しない場合の違いは、消費者が負担しなければならない日本の経済改革コストの大きさだ。 野田首相は、首相の示したTPPプランを支持する人たちからは、国民への積極的な売り込みが足りないと既に批判を受けている。これについては、改革の波は止められないが、家計にかかるコストを転嫁することはできると日本の有権者に納得させることだ。 保護主義はしばしば人気取りの政策とみられている。だが、自由貿易実現のために大衆迎合的な反論ができる存在が日本にあるとすれば、それは間違いなく、大衆迎合的と言われている、野田首相率いる民主党だ。 (筆者のジョセフ・スターンバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル・アジアのコラム『ビジネス・アジア』のエディター) 記者: Joseph Sternberg 2011年 11月 10日 19:17 JST
田巻 一彦
[東京 24日 ロイター] 今月23日に続き、26日にも予定されている欧州連合(EU)首脳会議で、ユーロ圏の債務危機解決への道筋がつくとの見方も出ているが、過剰な期待感は大きな失望につながると警告したい。欧州系銀行の自己資本増強の原資をどこに求めるのか、という点で独仏両国の溝は相当に深そうだ。 また、ギリシャ向け第2次支援策で民間負担を増加した場合、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の請求権が発動されるかどうかという金融システムにかかわる問題も不透明で、それに対する方策も依然としてはっきりしない。このためEU首脳会議では大枠だけを決めて、合意できない点は協議を継続する「先送り戦術」が展開される余地もあると予想する。 <財政悪化国に公的資金注入の余力なし> 23日のEU首脳会議で、欧州系銀行の資本増強については大筋合意し、必要な資金額は1000億─1100億ユーロになるとの見通しがEU関係者から出ている。国際通貨基金(IMF)はすでに2000億ユーロ規模の増資が必要との見解を示しており、その半分程度で果たして十分な規模であるのか、厳格な資産査定の結果が公表されていないだけに、時間の経過とともに市場が懸念を示す可能性が高いと私は予想する。 また、ドイツや北欧諸国など一部を除いてユーロ圏各国の財政悪化が顕著になっており、財政資金による銀行への資本注入は、欧州各国の一段の財政悪化を招くことになる。欧州各国は、2008年9月のリーマンショック以降、民間の需要不足を国債発行による公的需要に置き換え、経済的痛みを緩和してきた。その結果、ギリシャを筆頭にPIIGSの重債務国で財政悪化が深刻化。流通市場で国債価格の下落が進んだ。 それらの国債を保有する銀行の資産劣化が進み、自己資本不足に陥り、市場での資本調達が困難であるため、公的資金による資本増強の選択肢が浮上。EU首脳会議で、その路線が承認されるところまできた。しかし、よく考えてみると、問題の起点は国家財政の悪化であり、その悪化の連鎖で銀行経営が行き詰まった。自己資本を公的資金で補てんしても、問題の解決にならないことは自明の理だ。 <EFSF強化は、目くらましの術> そこでEUは、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の機能強化という“目くらまし”の戦術を駆使しようとしているように、私の目には映る。ユーロ圏17カ国は、EFSFの融資可能額を2520億ユーロから4400億ユーロに拡大することに合意し、各国議会の同意もスロバキアを最後として何とか取り付けた。ギリシャ国債の50─60%のヘアカット(債務元本の削減)が実行され、欧州系銀行の自己資本の目減りがあっても、EFSF資金を活用すれば、何とか対応可能という計算だったはずだ。 ところが、市場はギリシャのヘアカット近しとみて、イタリアやスペインなどでも同じことが起きるのではないかと連想した。コンテイジョン・リスク(伝播する危険性)が高まる中、イタリアとスペインの国債発行残高が合計2.1兆ユーロを超している現実では、4400億ユーロのEFSFの処理能力を突破しているのは明らかだ。 フランスがEFSFを銀行化し、欧州中銀(ECB)から資金を借り入れて、欧州系銀行の自己資本注入を容易にしようとしたのも、そうした厳しい現実を何とか乗り越えようという意図があったからにほかならない。しかし、ドイツは強硬に反対した。EFSFの融資や資本注入がうまく機能せず、損失が膨らめば、融資したECBの損失も拡大し、ECBの信認失墜から欧州のインフレが猛威を振るう事態を懸念したに違いない。 <ドイツに最後の出し手リスク> さらにECBの毀損した自己資本を増強する際に、まとまった規模の資金を出せる国はドイツ以外にない状況になっていると、想定したことも疑いないだろう。最終的に欧州系銀行の損失の大部分をドイツの財政資金で賄うという未来が来そうだという懸念がドイツにあったと考える。フランスはEFSF銀行化の提案を取り下げ、レバレッジを活用した2つの案が検討されているという。 ユーロ圏当局者によると、保証スキーム案と特別目的機関(SPV)を新設する案が検討され、IMFの一段の協力も協議されている。ただ、どのようなスキームが出てきても、欧州債務問題が時間とともに悪化するという情勢を変化させない限り、最終的にどこの国が多くの損失を埋めるのか、という問題は残る。ここでもドイツの動向が大きなカギを握ることは間違いない。 ドイツのメルケル首相が、国内の反対論を抑えきれないと判断した場合、26日のEU首脳会議で最終的な包括提案を先送りし、11月中下旬まで検討期間を延ばすこともあるのではないかと思う。24日付読売新聞朝刊は、26日のEU首脳会議で採択する声明原案の内容を報道しているが、その中でギリシャの債務削減は「11月末までに結論を出すことを期待する」との表現になっているという。 <はっきりしないCDSの取り扱い> 問題はEFSFの融資機能強化にとどまらない。このコラムで何回か取り上げているように、ギリシャ向け民間債務を50─60%カットした場合、CDSのトリガーを引いてCDSを売った金融機関は買った金融機関からの請求に対して支払い義務が生じる可能性が高まる。その規模が少額であれば問題ないが、市場ではギリシャ国債だけで1兆ユーロを超すCDSが発行されているとの観測もあり、CDSトリガーが引かれた後の金融市場の動向は予断を許さない緊迫した事態になることが予想される。 さらにCDSを売った金融機関の中には、米系金融機関も含まれるという観測が市場にはあり、欧州債務危機の影響が、大西洋の西側に向かって広がる懸念もある。また、欧州当局の根回しによってギリシャ国債のCDSトリガーを引かないことで全取引関係者の合意が形成された場合、他の重債務国やその他の国の国債CDSの機能が発揮されないという思惑を生むことになりかねない。そのケースでは、イタリアやスペインの国債価格下落という展開もありうる。 世界の市場で投資家が、リスクを積極的に取りに行く「リスクオン」取引に専念できる日は、そう簡単にはやって来ないと思わざるを得ない。 2011年 10月 24日 20:04 JST < 前のページ次のページ >
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